寝床

アニメや漫画

つうかあ雑記

サイドカーレースという「二人じゃないと走れない」競技で、マシンに搭乗する二人の関係がいかに重要か、またどんな関係があるか、という話は、いわゆるお当番回で、鈴鹿、筑波、茂木に焦点が当てられ、視聴者たちは知ることができた。残りの生駒、多可女、天ヶ瀬も、解説・実況やコメディ描写など、濃度の差はあれ、間接的ではあるけど、わかることと思う。

そんな中、三宅島TTというレースの主役に抜擢されているのが、三宅島がホームグラウンドである三宅女子ペアである。彼女たちは、三宅島の練習期間に衝突し成長した他のペアとは違い、既に二人で完成されているペアである。各ペアお当番回で、それぞれ助言をしているのも印象的だろう。

彼女たちの間には、物語が、話を進められる要素が、鈴鹿で言えば信頼、筑波で言えば主従、茂木で言えば自我というようなものは、すべてクリアされている。

彼女たちの間にあったのは、棚橋コーチという他人だった。それが彼女たちを結果的に勝利に導いた要素であり、また、お当番回がなく、三宅女子と同じように、特別な物語を生む要素を必要としなかった、生駒や天ヶ瀬との決定的な差だったのだろう。

棚橋コーチという「私たち」の外にある人のことを想って、「私は私の世界で勝利する」という決意を固める三宅女子。しかし、肝心のコーチは他の女、しかもよりによってマン島TT覇者の片割れと婚約したとかほざきだし、レースの目的を見失う。しかし最終回をみればわかるように、コーチに会うまでは「好きだから」という理由で乗っていたことを、お互いに確認しあい、レースに再び挑む。結局コーチは振られ、三宅女子の二人は懲りずに諦めず、「私は私の世界で勝利する」と締めくくる。

「私は私の世界で勝利する」。この言葉は言い換えると「今は迷っていても仕方ないから、とりあえず今みえる目の前の道を進んで結果を勝ち取れ(そうすれば今感じている迷いが晴れるかもしれないし、晴れなくても勝利という栄光が待っている)」と取れるのではないかと考える。考えれば考えるほど、三宅女子ほどこの言葉があうペアはいない、いや、三宅女子だからこそ言えた言葉なのだろう。

その理由は三宅女子が三宅島をホームグラウンドにしていることからもわかる。4話での筑波との争いや、最終回でわかるように、三宅女子は「三宅島のコースを知り尽くしているからレースに勝てた」のである。これは大きなハンデでもあるし、また、コースを知り尽くしていれば「(走る)道がみえる」。これは他のペアにはない大きな特徴だ。

だからこそ、三宅女子が走れなくなる理由は、二人の気持ち一つで左右されていく。「道がみえる」のに、走れない。手段はあるが、目的はない。コーチという目標がいなくなった時の三宅女子の迷いっぷりは、それをよくあらわしているだろう。



こうして考えてみると、三宅女子が主人公だというのも、面白い。サイドカーレースというスポーツ要素、そして百合、となったら、レースに憧れを抱いて内面でいざこざがあって結果最終回で三宅女子と張り合うまでに強かった鈴鹿を主人公にしたほうが、わかりやすく面白くなったのではないかとも思う。最後の最後で負ける展開になったにしろ、三宅女子という最大のライバル、という構図にすれば、コーチという他人を出さないものになったのではないかとも思う。

しかし、つうかあはそうじゃなかった。三宅女子が主人公で、棚橋コーチという好きな人を巡って争い、その目標を見失うけど、自分たちがどうしてレースをしているのか自問自答し、好きだったからということを思い出し、「私は私の世界で勝利する」と前進し、その結果、宮田ゆり曰くあの女に振られた棚橋コーチを、二人でまた追いかける。三宅女子の二人の間にある物語は最初から完結して(敢えて言うなら三宅女子の物語のスタート地点はマン島TTだろう。コーチがそこにいて、ホームではない三宅島で、どう戦うか、テーマが盛りだくさんだ)、他人が介入していく、しかもそれが男であるという事実。つうかあは「同じ男が好きって百合なんだよな」を全力で描ききった素晴らしいアニメだったと思う。


余談だけど、最終回で宮田ゆりの魅力を知った人がたくさんいた。前から宮田ゆりのことが好きだった私にとってはとても嬉しいことだ。ぜひ周回して、宮田ゆりの一挙一動に注目してほしい。彼女の我が儘で利己的で狭量なところが会話の隅々に転がっている。私のイチオシは、4話でお菓子の話で揉めていたのにいきなりランドセル壊したことを持ち出して怒ったこと、8話のクソガキ時代である。クソガキ時代の宮田ゆりは、「気の強い母親としょっちゅう喧嘩していて、同じくしょっちゅう夜中に家を出て、騒ぎを聞いためぐみの母親が、気を利かせてめぐみに声をかけて、ゆりの元へ行かせて彼女に慰めてもらっている。めぐみはいつものことかとゆりの元へ駆けつける。そしてゆりはそんなめぐみの母親の、大人な気遣いに惚れる。めぐみにはいつも感謝している」という顔をしているので、必見だ。


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